扇くん、要注意報!
あいだの話

照明の影が覆い被さったその時、目の前には王子様。わあ、と感嘆の声が客席から聞こえてくる。



唇に置かれた指にあの熱が触れた。



「うひゃ...」


「はっ、可愛くねえ声だこと」



そう呟くら、何事も無かったかのような笑みをつくり最後のセリフをお姫様に向ける。




「貴方が好きです」


「...私もです!」



────下りきった幕の中。クラスメイトに囲まれて笑顔を見せる扇くんの姿を見て、はじめて成功だと感じた。



お疲れ様が体育館裏に飛び交うなか、記念写真を撮るよりも先に扇くんを探した。



「扇くんがね、散々俺をたぶらかした奴をお礼に驚かせてやりたいって内緒にしてたの」


「お礼なのそれ!?」



ティアラやネックレスを外している最中にどこかに行ってしまったらしい。



呼び出すなら置いてかなくてもいいのに~...



実はちょこっと気まずい。扇くんに対してこんな気持ちは初めてで、どんな顔をしていたらいいのかわからない。



名前、で呼んでもいいのかな。一回きりなんて嫌だな。



それと、最後のシーン、キスされちゃうんじゃないかなって少し...とっても期待してしまった。



恥ずかしい!!穴があったら、穴がなくてもどこかに埋まってしまいたいな!?
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