愛のかたち
 翔と結婚して十年になる。お互い望んでいたが、なかなか子供を授かることが出来ず、不妊治療を始めたのが五年前だった。それまでは愛情を確め合う行為だったものが、それからは少し違った感覚になっていた。雰囲気に身を委ねるということは少なくなり、義務的になりつつあった。
 仕方のないことかもしれないが、それでも、そうなってしまうことは避けたいという考えが二人にはあって、だからこそ余計にそう感じさせないように振る舞っていることを、お互いが感じとっていたように思う。そうして三年が経った頃、翔が言った。

「いったん休憩しようか」

 その言葉に、彩華は正直ほっとしていた。どちらかが言い出さなくてはいけなかったが、彩華がその言葉を口に出来るはずもなかった。翔が彩華以上に子供を望んでいることが、不妊治療を始めてからひしひしと伝わっていたからだ。彩華は、月のものが来た時の落胆以上に、それを伝えた時の翔の表情を見ることの方が辛かった。
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