あなたしか知らない
「今夜はおでんにしようかな~。コンビニで買って、ホテルでのんびり食べようかな~」
しばらく滞在する赤坂のホテルの一階には、コンビニエンスストアがあったはずだ。
会社からいきなり日本での仕事を指示されてから、帰国が嫌で落ち込んでいたが祐奈の気持ちはほんの少し上向いた。
「え~っ⁉ 今日はクルクル回るスシ屋に連れてってくれるって言ってたくせに」
「おでんだって美味しいよ」
「だから、それ知らない!」
ムスッとした顔をしているロジャーは、ベビーフェイスだから四歳年上とは思えないくらい可愛い。
小顔で背がとても高いし、明るいブラウンの髪と緑の瞳もマッチしていて俳優かモデルのようだ。
祐奈とロジャーは、製薬会社の研究室でコンビを組んでいる。
男女とか国籍とか関係なく、祐奈が好き勝手に喋ることができる貴重な友人であり先輩だ。
「ユナ、久しぶりなんでしょ東京は」
「ええ」
「会いたい人とかいないの?」