あの頃からあなただけが好きでした

 これで、この1年の懸念だったバージルは片付いた。


 そろそろ、あのふたりの方に本腰を入れなくては。
 2ヶ月先のパーティーまで、やる事は多い。



 市役所に密告するヤツ、グレイグを煽るヤツ。
 それからグレイグの妻の権利を守る弁護士は、
女性を探そう。



 俺はジャケットの内胸ポケットに入れていた、兄が買った指輪を空にかざした。
 石は小さいが、キーナンが当時の精一杯の気持ちを込めた指輪だ。


 これとそっくりの指輪を作った。
 いわば、偽物の指輪だ。
 それをマリオンに預けて、姉のジュリアに渡してやろう。


 彼女が精神的に病んでいたと知った時は気の毒に思い、こちらからだとバレ無いように子爵家に
金銭的な援助をした方がいいか、と思っていたが。


 今のジュリアには夫も居て、来年には子供も生まれると言う。
 それならば、今では捨てられるかもしれない本物のキーナンの指輪は渡さなくてもいい、と思ったのだ。


 姉にキーナンの形見の指輪を渡すのは、マリオンの判断次第だが。
 あの当時の話も少しマリオンに確認したかったので、その糸口に出来るかも、と期待する。



 俺は再び指輪を胸へと戻した。
 時々こうして取り出して、これからを想い、心を落ち着かせる。



 クレアを油断させる為に、マリオンには嘘を付いてしまうが。
 事前に話して、マリオンに友人を騙す協力はさせられない。
 謝恩パーティーが終わったら、全部話す。



 あの日の傷は消えてしまったが。
 どうか、俺の手を取って欲しい。

 君にはこの世界の美しいものだけを見せると誓う。


 今度こそ……直接、君にちゃんと伝えるから。


『あの頃から、君だけが好きでした』




   おわり

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