あの頃からあなただけが好きでした
忘れる、忘れる、忘れられる。
そう呪文のように自分に言い聞かせながら、通りを歩いて帰ったんだろう。
周りの事なんか気にしていなかった。
自分の部屋に帰るまで。
泣くな、泣くな、泣いたりしない。
もう貴方の夢も見たりしない。
もし見たとしても、もう泣かない。
私はもう……貴方を想わない。
◇◇◇
あれから3日が過ぎた。
今夜はスコットと約束したブレナーのバースデーパーティー会場の候補の下見で、先月オープンしたばかりのレストランに来ている。
あまり有名なお店は、貸切りにするには費用が
かさむ。
サプライズ的な御祝いに協力してくれそうなのは、これから人気を得たいオープンしたばかりの店なんだ、とスコットは力説する。
「でも料理が不味くっちゃ、意味ないし」
スコットは元々は裕福な伯爵家嫡男なので、なかなか舌が肥えている。
彼はブレナーと結婚する為に、次代伯爵位と家族を捨てた。
クールに見えて、実は愛に生きる男だ。