あの頃からあなただけが好きでした

 自分が来たことは内緒にしてくれ、とクレアに頼みつつも、それでも最後の悪足掻きをした、と彼は続けた。


「翌日に列車の予約を入れていたから、王都の
ホテルに泊まっていて、それをクレアに教えた。
 もしかしたら、口止めした話を聞かされた君が会いに来てくれないか、と期待して朝まで待ってしまった」

「待って、私何もクレアからは聞いていなくて!」

「……そうだったんだ。
 次の朝クレアが駅まで見送りに来てくれて、君には俺が来た事は話したんだけど、会いに行かないと言ってたの、と言われて……
 もう本当に諦めよう、と決めたんだ」

「本当に聞いていたら、絶対に会いに行ってた!」

「……直接に君には何も言えなくて。
 卒業前の事も、3年前の事も。
 どちらも人伝にした俺が根性なしだったから」


 カーティスはそう言って、微かに笑った。
 そして、キーナンさんがジュリアに買った指輪の箱を私に手渡して。
 ……私に背を向けた。



 私がもっと素直な可愛げがある女の子だったら。
 姉は私が幸せになる邪魔をしたりしなかったの?

 私が女の子同士の連帯感が持てる相手だったら。
 クレアはカーティスが来たことを教えてくれたの?


 この人徳の無さは、愛想の無い私の。
 自業自得なのかな。
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