【短編集】男子アイドルユニット「IM」の隠し事
「いいじゃん、いいじゃん! IMの二人も!」
「ありがとうございます。輝さん」
「光。颯真と肩を組める?」

翼の申し出に、水月は躊躇う。

「ソウと? でも……」
「いいよ。手は届く? 中腰になろうか?」

腰を落とそうとする颯真に、「大丈夫。多分、届くから!」と、水月は颯真の背に腕を回す。
けれども、やっぱり手が届かなかったので、颯真は膝を曲げて、体勢を引くくする。
それから写真を数枚撮ると、カメラマンの「オッケーです!」を合図に、二人は身体を話したのだった。

四人で撮ってもらった写真を確認すると、颯真は双子を向いて頭を下げる。

「ありがとうございました」
「ありがとう、二人とも」
「会誌が出来たら、二人にも届けるから」

この後も、別のアーティストと写真を撮るという双子の先輩と別れて、二人は控え室に入る。

「ソウ、さっきはありがとう」
「いいって。それより、どんな会誌か楽しみだね」

双子が会誌をくれなくても、颯真は研究も兼ねて、双子のファンクラブに入っているので、会誌は手元に届くのだが。

(まあ、二冊届いたら、一冊は姉貴にでもやるか)

ミーハーな颯真の姉貴は、双子の先輩のファンでもあったはずだ。

待ちくたびれていたメイクさんに案内されて、二人は化粧台前に並んで座る。

「ファンクラブが出来たら、自分たちもああやって写真を撮るんだね……」
「そうだね」

IMにはまだファンクラブがなかった。
おそらく、その内出来るだろうが、今はアイドルとして軌道に乗る事のが先だろう。

「うう……。写真撮影もまだまだ慣れないから緊張する……」
「その内慣れるって。今の内に研究しといたら?」
「研究って……何が?」

メイクを直してもらいながら、鏡越しに水月が視線を向けてくる。
同じくメイクを直してもらいながら、颯真も視線を向ける。

「カッコよく撮れる方法や、可愛いく撮れる方法について。今時、スマホで調べればたくさん出てくるだろう」

特に女子なら、自撮り写真をインターネット上に投稿する上で、そういったサイトを知ってるだろうと、思って颯真は言った。
ただ、水月はそういった事にあまり興味がないのか、首を傾げただけであった。

「そうなんだ? じゃあ、調べてみる」

そうして、メイクをされながらマネージャーに頼んで持ってきてもらったスマートフォンで調べ出す水月を眺めると、同じようにマネージャーにスマートフォンを持ってきてもらった颯真もスマートフォンで調べ出す。

SNSでは、今日の歌番組に対する期待や応援メッセージが沢山発信されていた。
その中には当然、IMや颯真個人へのメッセージもあった。

(頑張らないと)

ファンの笑顔を見るのが好きだった。楽しませるのが好きだった。
だから、今日という日を楽しい日にさせたい。
ファンにとってもーーIMにとっても。

「ソウ、もう終わった?」

いつの間にか、水月のメイクは終わっていた。

「ああ」

丁度、颯真のメイクも終わったばかりだった。
スマートフォンをまたマネージャーに預けると、颯真は控え室の壁掛け時計を見つめる。

「そろそろ、ステージに行こうか?」
「うん!」

同じように、水月もスマートフォンを預けると、颯真に続く。

廊下に出て、ステージに向かいながら、傍らの水月に声を掛ける。

「もう緊張は治った?」
「う、う~ん。まあね」

ステージに近づくと、客席の歓声も近づいてきた。
さっきの双子の先輩など、他のアーティストたちも続々と集まってきていた。

「精一杯、楽しもうか」
「うん!」

顔を見合わせると、二人は互いに頷き合う。

「本番までのカウントダウンを始めます!」

ステージ近くから、スタッフが声を張り上げる。

光と影のコントラストのステージの開幕まで、あと僅か。
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