溶け合う煙

1.ルーティン

会社の最寄り駅にあるカフェは今年も秋の味覚ラテを始めた。

しかし、期間限定に目もくれず、いつものカフェラテをテイクアウトし、会社までの道のりにあるスモーキングエリアによる。

ここで、煙草を一本吸い、カフェラテを飲みながらスマホでニュースをチェックするのが私の朝のルーティン。

だけど、今朝は肝心のライターが見つからない。
電子タバコもあるけれど、やっぱり、本物の煙草の方が味が良い。

カフェラテを地面に置き、煙草を一本指に挟んだまま、カバンの中をガサゴソと探してみるが出てこない。

「…あっ。」

ふと、昨日の夜、シガレットポーチのたばこを新しいものと入れ替えた際に、ライターも一緒にポーチから出したのを思い出した。

「…ライター置きっ放しだ。」

すると後ろからすっと長い腕が伸びてきた。

「Here you are.」

…えっ?日本語じゃない?

振り返ると、おとぎ話の王子様のような背の高い金髪の外国人男性が立っていた。
差し出された手にはライターがある。

「さっ、、、サンキューベリーマッチ」

突然のことで片言になる。

借りたライターで煙草に火をつけ終わると、彼に返そうと振り返るが、笑っちゃうくらいうまく言葉が出ない。
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