甘く、溶ける、君に。
隣の席から呼ばれて、顔を向ける。
隣の席は相変わらず変わっていなくて、いつも通り制服を着崩しているから、目に入るたびに「チャラい」と思わせてくる。
これほどまでにこの形容詞が似合う人、他に見たことがない。
ちょっとくらいピアス外して、一回くらいネクタイもつけてこればいいのに。
入学当初から髪の毛も茶色で、田邊の黒髪は見たことがない。
まぁ校則なんてないに等しいし、これが彼のアイデンティティといえば、そうなんだけど。
「今日さー、遥乃んち行くのやめねえ?」
「え」
突然の提案がわけわからなくて首を傾げる。
今日は先週から、田邊と約束していたのだけど。
いつも通りもちろん誘ってきたのは田邊だし、なんでそんなことを言うのかわからなかった。
何か田邊に嫌なことしたっけ、いやそれならもっと怒ってたりもするけど……いつもと変わらない田邊の表情と声のトーンだったから余計にわからなかった。