甘く、溶ける、君に。

ここで全てを説明するわけにはいかない。


いっそ、好きな人は田邊だよ、とでも言うべきなのかな。



たとえば、ほら……田邊が「遥乃の好きな奴は井上くんだよ」みたいなこと言ったら……わ、それはダメだ。

田邊、お願い。きっと田邊なら、私がなにも言わなくたってこの状況を理解してくれるはず……! それくらい私は、田邊のこと信用してるよ。



願いを込めるように田邊に視線を向けた。通じたらいい。目線で、わかってくれると信じてる。



「あー……まあ、わかんねーけど」



わかんねー、なんて言いながらこちらを見た田邊は絶対全てを察したような顔をしていて。


きっとわかってくれた。あとは私が何か言えばいいだけ。

きっと余計なことは、田邊は言わないから……。



私が何か言わなきゃと口を開いたところで、ふいに田邊がこちらまで近づいてきた。


わざわざもう一度校舎内に入ってきて、

よくわからなくて開きかけた口も閉じた。




「……えっ」



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