実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
 その時だった。
 風に乗って微かにそんな声が聞こえてくる。その途端、ピタリと馬車が停まって、わたしは身を乗り出した。


「アダルフォ?」

「……申し訳ございません、姫様。こちらの門は障りがあったようで」


 アダルフォは申し訳なさそうに眉根を寄せる。だけどわたしは、そんなことはどうでも良かった。


「――――姫様は今出掛けていらっしゃる。ここにはいらっしゃらない」

「いっつもそう言ってるじゃありませんか! じゃあ、一体いつなら会わせてくれるんですか⁉」

「そもそも、会わせられないと言っているだろう!」


 耳を澄ませれば聞こえてくる懐かしい声に、わたしは胸を躍らせる。


(間違いない)


「姫様⁉」


 馬車の扉を開け、アダルフォが止めるのも聞かず、わたしは勢いよく走り出す。


「エメット!」


 声を張り上げれば、数人の男性が一斉にこちらを振り返る。


「ライラ!」


 そこにはわたしの幼馴染――――エメットが立っていた。
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