実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「何で? わたし、いつだってシルビアに貰ってばかりで、何も出来ていないのに」

「わたくしね、これまでずっと、自分の感情と向き合わずに生きてきましたの。考えれば考えるほど、悲しくなったり、寂しくなったり、時にイライラして辛くなりましたから」


 ポツリポツリと言葉を連ねるシルビアは、どこか儚げで、寂しい空気を纏っていた。


「作り笑いを浮かべていれば、誰からも詮索されない。楽しいふり、喜んでいるふりをして、『わたくしは幸せだ』って自分を納得させてきました。怒りも悲しみも、微笑んでさえいれば、存在しない気がしてくる。
ずっとずっと、このままで良いと思っていましたわ。誰かの操り人形で居ようって。その方が楽だからって。
だけど、姫様にお会いして、それじゃいけないと思ったのです」


 何故だろう。目頭がじわりと熱を持つ。シルビアの瞳にも、薄っすらと涙が溜まっていた。


「姫様が悩んだり、苦しんだり、家族を恋しがっている姿を見て、わたくしは初めて自分の気持ちに向き合うことが出来ました。わたくしはずっと、寂しかったんだって――――そんなことにすら気づかずにいたのです。
明るくて、素直で、戸惑いながらも前に進もうとする姫様は眩しかった。誰かに舗装された、美しい道程を漠然と進むわたくしとは違う。険しくとも、ご自分でご自分の道を切り拓いて行かれる方だと思いました。
そんな姫様を見ながら、わたくしも、自分の足で自分の道を歩んでみたいと――――初めてそう思ったのです」


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