実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
 感情を表に出すべからず――――王族としての教育が始まってすぐ、わたしはそう教えられた。それなのに、今のわたしの顔は、みっともない程クシャクシャだ。

 その教えの真逆を行っているのだから、わたしはとても、出来の悪い生徒だったのだと思う。

 だけど、それが誰かの――――シルビアの助けになったのなら、こんなにも嬉しいことは無い。わたしが城に連れて行かれた意味もあるのかもしれない、なんて思った。


「ねえ、姫様。わたくし、感情豊かであることは、悪いことだとは思いません。
姫様は誰かの鏡となりうる人。わたくしの感情を映し出してくださったみたいに、他の人にも同じことが出来ると思いますの。
だって、姫様に会いに来ている皆さまは、誰一人として陛下にそうと命じられたわけではありません。皆、自分の意思で姫様に会いに来ているのです。
あなたには、人の気持ちが分かる。平民と貴族、両方の気持ちと価値観がお分かりになるでしょう? これは陛下やランハート、ゼルリダ様には持ち得ない強味です。
わたくし、姫様は良い君主になられると、そう思いますわ」


 シルビアはそう言って穏やかに目を細める。


(うん、とは言ってあげられないけど)


 ありがとう、って口にして、わたしは小さく笑った。
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