実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
『愛のない結婚を孫に強要したい訳でもない』


 以前おじいちゃんが言っていた言葉。恐らくはお父さんとお母さん、ゼルリダ様との関係なんかも踏まえてそう言ったんだって、今ならわかる。


『ライラ――――これからの国を――――お前を支えるに相応しい男を探せ。それが今のお前に課せられた、至上命題だ』


 数か月の時を経て、おじいちゃんの言葉が重く圧し掛かってくる。

 チラリと視線をやれば、バルデマーはほんのりと頬を染め、それから穏やかに微笑んだ。宝石みたいに美しいバルデマーの瞳と視線が絡み、喉がゴクリと上下する。


「努力してみる」


 答えたら、バルデマーはわたしの指先に口付けた。身体がビクッと跳ねる。指先がジンジン疼いて、今すぐ叫びだしたい気分。


「お願いいたします」


 いつも真面目で正統派な彼が見せる、どこか影のある魅惑的な笑み。
 大変単純なことに、それだけでメーターが一気にバルデマーに傾いてしまった。
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