実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
 何よそれ。バルデマーがランハートの何を知っているっていうの?
 その上彼は、ランハートを貶しているようで、おじいちゃんやわたしのことも否定している。
 
 バルデマーは真剣な表情で、わたしに詰め寄った。


「アダルフォだってそうです。騎士として有能であっても、彼が王配として政務が出来るとは思いません。第一彼には、王配としてやっていこうという気概がない。それなのに姫様は、どうして彼を気にされるのです?」


 バルデマーがそっとわたしの頬を撫でる。
 いつもと同じ、王子様みたいな優しい手付きで。

 だけどわたしの胸は、恐ろしいほど凪いでいた。これ以上バルデマーが二人を悪く言うのを聞きたくない。


「――――今日は誘ってくれてありがとう。部屋に戻るわ。することが山積みなんだもの。見送りは結構よ」


 そう言って、クルリと踵を返す。
 けれど、バルデマーはわたしの腕を掴み、強引に振り向かせた。


「お待ちください、姫様! 私ならばこの国をもっと豊かにできます。姫様はただ、笑って側に居て下さったらそれで良い。私があなたを幸せにして差し上げます」


 真剣な眼差し。受け取り手であるこちらの気分も引き締まる。


「それが……あなたからの求婚と受け取って良いのかしら?」


 尋ねれば、バルデマーはグッと唇を引き結び、わたしの前に勢いよく跪いた。


「姫様――――どうか私を、あなたの夫にお選びください。どうか――――」


 縋る様に握られた手のひらがとても熱い。
 美しい花々の咲き乱れる花園の中、しばらくの間、わたし達は互いを静かに見つめ合っていた。
< 187 / 257 >

この作品をシェア

pagetop