実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「ところで姫様、スピーチの原稿は如何しますか?」

「ああ……うん。スピーチ、スピーチねぇ」


 答えつつ、思わずため息が漏れそうになる。
 王太女のお披露目の際にすることは大きく分けて二つ。

 一つ目はおじいちゃんから王太女の指名を受けること。この時にティアラや国宝である神具なんかが授けられる。みっともない姿をさらさないよう、後継者教育を受け持ってくれた講師達と一緒に、毎日立ち居振る舞いを必死に練習している。

 そしてもう一つは、王太女として、皆の前でスピーチをすることだ。
 記者や国民の関心は寧ろこちらの方が主らしい。絵師たちの描く姿と違って、わたしが語った言葉をそのまま国民に伝えることが出来るって言うのがその理由だ。

 そこまで終わってしまえば、後は延々とお祝いの儀式、宴が続くらしい。近隣諸国からお客様なんかもお迎えして、一週間近くもの間、夜会やらお茶会なんかが繰り広げられるそうだ。気疲れはするだろうが、とにかく華やかで素晴らしい会にすると文官たちが力説するので、わたしもとても楽しみにしている。


 とはいえ、まずはスピーチを乗り越えないことには話にならない。


「以前もお伝えした通り、わたくしどもが代理でお作りすることも可能ですが」


 ロナルドはそう言ってわたしの表情を窺う。大事な大事な儀式の要と呼ぶべき存在だもの。心から心配してくれているのは分かってる。他ならぬわたしだって心配だもの。


「ありがとう。実は、あれからずっと考えていたのだけど……原案はわたしが考えたいなと思っているの」


 躊躇いつつ、自分の考えを口にすれば、彼はほんのりと目を見開いた。


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