実はわたし、お姫様でした!〜平民王女ライラの婿探し〜
「――――お願い、アダルフォ。絶対にこの部屋から居なくなったり、逃げたりしないから、今は一人にしてほしいの。さっきみたいに酷いこと、言いたくないから。……本当は自制できなきゃいけないんだろうけど、今はどうしても無理そうで」


 そう口にしつつ、自分が情けなくて堪らない。
 別に、元々人間が出来た方じゃ無かった――――ごくごく普通の町娘だったけど、実は王族だったって言うからには、特別な何かがあっても良いじゃない? 
 聞き分けが良くて、何でもできて、何があっても全く傷つかない――――そんな風に生まれていたら良かったのになんて思って、すごく嫌になってしまう。


「――――先程はすみませんでした」


 その時、アダルフォが思わぬことを言った。わたしはハッと彼を見上げつつ、そっと首を傾げる。
 アダルフォはゆっくり、深々と頭を下げた。流れるような――――寧ろ時が止まってしまったかのような綺麗な所作。知らず背筋がピンと伸びる。アダルフォはそんなわたしをまじまじと見上げつつ、徐に口を開いた。


「姫様が罰せられたらいけないと――――そう思って口にしたのですが……少なくともそれは、今お伝えすべきことではありませんでした。
ここには俺と姫様しかいないのに……姫様はここでしかご自分の感情を吐き出すことができないのに――――混乱の渦中にある姫様がそれすら許されないのはあんまりです。
完全に俺の配慮不足でした。本当に、申し訳ございません」


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