だって、恋したいもん!

第百四十四話  ホント助かった







火曜日になり、


5限の音楽の時間…

美波と一緒に音楽室へ来た。



美波「まだ来てないねぇ~?」

理佐「うん、そうだね…」

美波「まぁそのうち来るんじゃない?」

理佐「うん……」

美波「いつもの席に座ってようよ」

理佐「うん」



最近、私たち三人はいつも同じ席に座るようになっていた。



しかし、授業開始のチャイムが鳴っても彼は現れなかった。



高嶋先生「はーい、始めよっかー」

と、先生が入ってきた。

けれど彼は現れなかった。



美波「あいつー、サボりかなぁー?」

理佐「来ないね……」



そして出欠をとり終わってもやはり現れなかった。



授業が始まり二学期中に全員がピアノで弾けるようにと与えられた課題曲、

「メヌエット ト長調」を先生がお手本で弾き始めると後ろの引き戸が少しずつ開いてきた。


私と美波はそれに気付きじっと見ていると、

彼が腰の高さまでかがんでバレないようにと少しずつそっと開いていた。



美波「あ、来た!」

と、美波が小声で言った。


そして引き戸が三分の一ほど開いたところで…


高嶋先生「西野ー!バレてんだから堂々と入って来いー!」

と、先生が言うと生徒全員が振り返り大爆笑になった。


高嶋先生「じゃあ西野ー弾いてみなー!」

と、彼が先生に手招きされた。

すると彼は…

義雄「オレが鍵盤弾けるわけねーじゃん!」

高嶋先生「あれだけギター弾けるのにな、鍵盤もやったらすぐ出来るだろー」

義雄「そんなヒマないしー」



高嶋先生「じゃあ誰か……」

と、先生が生徒の方を見渡していると美波が彼の方を見て私を指差していた。

理佐「え、ちょっと美波……」

それに気付いた先生は彼に…

高嶋先生「渡邉に弾いてもらうかー?」

と、言った。

彼も私の方を見て手を合わせて「お願い!」とジェスチャーしていた。


理佐「私ですか!!?」

と、先生に言うと…

高嶋先生「じゃあみんなに見本見せてやって」

と、言われ私が弾く羽目になってしまった。


でもこの曲は小さい頃からずっと練習していた曲だから楽譜を見ずとも弾ける曲だった。

そして課題部分まで弾き終わると生徒からも拍手が起こり…

高嶋先生「よし、じゃあ席に戻っていいぞー」

と、言って彼も難を逃れ席に戻った。


義雄「渡邉さん、ありがとう…助かったよ」

と、彼に言われ…

理佐「ダメだよぉー遅刻はー!」

と、私が言うと…

義雄「ごめんごめんホント助かった」

と、言いながら席へ戻った。







第百四十五話へつづく…











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