だって、恋したいもん!

第八話  母






理佐「ただいまー」

私は玄関のドアを開けてリビングへ入ると、


母「お帰り、ケーキあるけど食べる」 

と、母が言った。


理佐「あ、うん…食べる食べる♪」

と、言うと母が私の顔を覗き込んで…


母「あれ?何かいいことあった?」

理佐「え?何よー…何にもないー」

母「いやいや、あのねぇ…」

母「私はあんたのお母さんを17年もやってんのよ!」

母「ごまかされませんからね」

理佐「えー! 何にもないよー」

母「うそおっしゃい!」

母「彼氏でも出来た?」

理佐「もーやめてよお母さん!」

理佐「それに私まだ16だよ、誕生日は10月!!」

母「お腹の中もいれたら17年でしょ?」

と、言う母に…

理佐「着替えてくるー」

と、言って私は2階の自分の部屋へ行った。



そして鏡を覗き込んで…


理佐「えー?私、そんなにニヤついてたかなぁ~?」

そりゃぁ彼とあんなに話が出来たんだから顔もゆるむかもしれないけど…

そんなに顔に出てたかなぁ~…

私は鏡に向かってもう一度顔を引き締めた。



そして着替えて1階のリビングへ降りた。




母「コーヒーにする?紅茶にする?」

理佐「あ、うん…コーヒーにする」

理佐「ブラックでね」

母「もぉー背伸びしちゃって!」

理佐「もぉー何ーお母さーん!」

理佐「私、いつもブラック飲んでるじゃん」

母「あー、そうだっけ?」

母「はいはい、ブラックね」


そしてテレビをつけると夕方の情報番組がやっていた。


母「お待たせ、どっちがいい?」

と、母がコーヒーとケーキを2つずつ持ってソファに並んで座ってきた。

理佐「私チーズケーキがいい」

母「あら、じゃあ私ショートケーキ食べちゃうわよ」

理佐「うん、いいよ」

と、言って2人でケーキを食べ始めた。


理佐「ねぇねぇ、お母さん」

母「え?なぁに?」

理佐「お母さんとお父さんってどうやって知り合ったの?」

母「え!? ゴホッゴホッ…」

母「ちょっと急に何聞き出すのよこの子は…」

理佐「え?だって聞いたことなかったもん」

母「言ったことなかったっけ?」

理佐「うん、聞いてない!」

母「会社よ、会社…同じところで働いてたの」

理佐「へぇ~」

理佐「で、どっちから声かけたの?」

母「どっちから、て言うか…話してるうちに遊びに行こうかて話になって…」

母「それで遊びに行って何か自然に付き合うようになったのかな?」

理佐「えー何それー…絶対ウソじゃん!」

母「ホントよぉー」

理佐「自然に、てそんな…」

理佐「わかった!お母さんからでしょ?だからごまかしてるんだ!」

母「ごまかしてなんかないわよ!ホント何か自然に、て言うかね…」

理佐「えー!自然に付き合って自然に結婚するの?」

母「結婚はまぁ…お父さんがちゃんとプロポーズしてくれたわよ」

理佐「え?何て何て?」

母「え?普通に『結婚して下さい』て…」

理佐「で?お母さんは何て答えたの?」

母「わかりましたよろしくお願いします、て…」

理佐「何それー、全然面白くないじゃないー」

母「そんなもんよー」

母「そんなにね、ドラマや映画みたいなことがしょっちゅう起きるわけないでしょ!」

母「普通でいいのよ、普通で!」

理佐「つまんなーいの」

母「人の人生、つまんないとか言うなー!」

と、言って母は私をくすぐってきた。

理佐「キャハハッ!!やめてよーお母さーん」


「私はもうすでに今日、ドラマや映画みたいなことが起きちゃったんだけど」とはさすがに言えなかった。








第九話へつづく…











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