溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 晃汰さんと結婚して早一カ月。

 あのハイグレードマンションでの新婚生活にも大分慣れてきた。

 恋愛関係から結ばれたカップルでもなければ、お見合いをして縁談がうまくいったというわけでもない。

 突拍子もない、どこか勢い任せで始まった婚姻関係で、うまくいくのだろうかと当初、不安は大きかった。

 一番は、相手が〝水瀬院長〟だということ。

 私の中でプライベートで交わることのない人だと思っていた。まして、結婚するだなんて。

 だけど、始まってみれば心配していたような事柄は静かにひとつずつ解決していった。

 仕事に厳しく、なんでも華麗に完璧にこなしていく〝水瀬院長〟は、プライベートでは普段見せない顔を私に見せてくれている。

 これまではほとんどしなかった世間話も、プライベートな時間を一緒に過ごすことによってたくさん交わす機会が増えた。

 どんなことに興味があって、なにが好きでなにが嫌いか、少しずつ知っていっている。

 一緒に住むことになり、最大の問題だった寝室事情も、結局特に進展のないまま。

 同じベッドで眠ってはいるものの、一線を越えるようなことは今のところない。

< 111 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop