溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 そこに見えたのは停車したタクシーから降車してきた晃汰さん。だけど、私が驚いたのは晃汰さんを予想外の状況で見かけたからではない。

 後から降りてきたのが、以前学術集会の時に会った五十嵐さんだったからだ。

 なぜ、ふたりが一緒にいるのか。しかも、タクシーから降りてくるとはどういうことなのだろう。

 今、晃汰さんはちょうどお昼休みの時間ではある。でも、タクシーから降りてくるなんて、どこかに行っていたことになる。

 しかも、一緒にいたのは五十嵐さんとなると落ち着いてはいられない。

 離れている場所から見ているものの、気付かれないように身を隠す。

 ふたりはいったいどこに向かうのか。それを私は知らなくてはいけない。

 鼓動が嫌な音を立てて高鳴る。緊張に押し潰されそうになって気持ち悪さが込み上げてくる。このままだと嘔吐しそうだ。それでも視線はふたりに釘付けになり動かせない。

 大きく深呼吸をし、なんとか物陰から様子を窺い続けた。

 タクシーを降りたふたりが後方のビルに近付いていく。

 その一階テナントに書いてある〝産婦人科〟という文字を目に、まさか……という思いでふたりの行方を見つめていた。


「う、そ……」


 足元で衝撃音とバシャッという音がして、膝下が濡れる感覚を覚える。

 いつの間にか持っていたフレーバーティーを手から落としていた。

 曇りガラスになっている自動ドアの先にふたりが消えていくのを見つめたまま、私はしばらくそこから一歩も動けなくなっていた。

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