溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


「お腹を痛めて産まなくても、いいのでしょうか……?」

「なんだ、そんなことを考えていたのか」

「だって、よく言うじゃないですか」


 意外に考え方が古風だったのかと、そういう真面目なところにまた新たな好感が生まれる。


「もう、千尋は十分お腹を痛めてる。こんなに大きくなったお腹を抱えて、十カ月間も過ごすんだ。それだけでもう十分だって俺は思うけど」


 千尋の目に、微かに涙が浮かんでくるのを目撃する。

 そばに寄り、大きなお腹の前で組んだ手をそっと取った。


「ありがとう、ございます。本当は、すごく不安で……だから、今そう言ってもらって、内心ホッとしたのだと」


 出産、まして初産ならその不安は計り知れない。

 そばで寄り添うしかできないもどかしさを抱えながら、千尋をそっと抱き寄せた。


「片時も離れずに、そばにいるから。だから、頑張ってくれるか?」


 腕の中でこくこくと何度も頷き、「はい」と声が返ってくる。


「もちろんです」


 力強く返ってきた声は、すでに母親の強さと優しさがはっきりと表れていた。

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