溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 水瀬院長が院長室に戻ってきたのは、十分もしないうちのこと。

 スクラブに白衣を羽織った姿からスーツに着替えた彼は、一日の仕事を終えた後とは思えないくらいきっちりときまっている。

 オペ後は疲労感を漂わせているドクターが多いが、水瀬院長にはそんな空気は皆無だ。

 そういうところを見てきている私にとっては、たまに彼はサイボーグかなにかではないかとふと思うことがある。

 準備を終えて揃って院長室を出て、駐車場にある水瀬院長の車に向かう。

 乗せてもらうのは、うちの実家に行った日以来だ。

 乗り込む前、なんとなく周囲を確認するように見回してしまう。

 院内では、私たちの関係は院長とその秘書のまま。

 行動を共にするのは普通のことだから、彼の車に乗り込もうが病院内の人間が不審に思うことは基本的にはないはず。

 それでも特に誰の目もないことにホッとし、そそくさと助手席に乗り込むと、車は駐車場を出ていく。

 公道に出てからすぐ、ハンドルを握る水瀬院長に「あの、院長」と声をかけた。

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