溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る


 マグカップのカフェオレが半分くらいになった時だった。

 部屋の中にインターフォンの音が鳴り響く。

 時刻は八時半を回ったところ。引っ越し業者との約束時間は九時だ。少し早い。

 インターフォンに応じようとモニター画面に近付いて、そこに映っているのが晃汰さんだったことに目を見開いた。


「院長、おはようございます」


 慌てて応対すると、モニター画面に映る端整な顔がわずかに険しい表情に変化する。


「院長……?」

「あっ……晃汰さん、おはようございます」


 まだまだ切り替えがうまくいかない。

 まだ同居を開始していない私たちは、圧倒的に病院で一緒にいる時間の方が長い。


「おはよう」

「今、開けますね」


 まさか晃汰さんがここを訪れるなど思ってもみなかった。

 もともとは、引越し業者を送り出してから、私が新居に単独で向かうことになっていた。

 晃汰さんとは現地で会う予定だったのに。

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