【続】酔いしれる情緒
大きなドアの前に辿り着くと、春は一度立ち止まっては大きく息を吸った。
この先にいるのだろう。清美一花が。
確かに奥から話し声が聞こえてくる。
その中に女の声はないが、
「行くよ」
「うん。」
春は覚悟を決めたような声色で私にそう告げると、その大きなドアを開けた。
中では数人の男性と橋本、それから───
「一花」
春がその名前を呼んだ途端、隅っこで三角座りをしている彼女がパッと顔を上げた。
彼女の瞳は春だけを見つめているけど、私は首元がキュッと苦しくなった。
「はる…?なんで…」
「……………」
驚きでなのか、丸くなった目。
「また会いに来てくれたの……?」
「うん」
「アタシに?」
「一花に会いに来た」
「一花って…」
だけどその顔は凄く嬉しそうな。
狂気はなく、雑誌の表紙で見た可愛らしい笑顔を見せる一花さんだった。