惑溺幼馴染の拗らせた求愛
不毛な火起こし競争が終わり、バーベキューグリルが温まったところで肉を焼いていく。見事な焼き目がついたところでトングとナイフで切り分ける。炭火で焼いた厚切り肉は、これまた格別だった。
「美味いな」
舌が肥えているであろう明音も太鼓判を押した。
「すごく良いお肉だね?」
ほどよく脂ののった分厚い肉は傍目に見ても上等な代物だった。鈴菜がドヤ顔になって説明した。
「ほらうちのお姉ちゃん、精肉店に嫁いだじゃない?キャンプするから良い肉もわけてもらっちゃった」
「強奪してきたのかよ……」
「分けてもらったのは廃棄予定のお肉です!!こっちのお肉はちゃんとお金払ってる!!」
鈴菜はプリプリと怒りながら鷹也に反論した。美味しいお肉と綺麗な景色。のんびりと流れていく時間が日常のストレスを癒していくようだ。
麻里達は欲望のままに肉と野菜を焼いては食べていった。持ち込んだ食べ物があらかたなくなると今度は皆で焚火を囲む。運転手に配慮し、酒は飲まずコーヒーで乾杯だ。
「出来たよー!!」
麻里はコーヒーのお供にお手製のホットサンドを振る舞った。パンの中身は特製のトマトソースにハムとチーズ。今朝出かける前に家で仕込んでおいて、焼くだけの状態で持参したのだった。
「とけたチーズが美味しいー!!これ、売れるよ」
「うん、いいな」
麻里の作ったホットサンドは絶賛された。
「冬だしちょうどあったかいメニューが欲しいと思ってたんだよね」
SAWATARIのサンドウィッチは要冷蔵で、賞味期限もその日のうちとなっている。しかし、冬場は冷たい物よりも温かい物が食べたくなるものだ。
冬限定なら売れるかな……?
三人の反応は上々だ。帰ったら栞里に提案してみる価値はありそうだ。