冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
彼は無造作に下ろされた前髪をかき上げる。
切れ長の鋭い瞳はまっすぐ私を捕らえ、自然と背筋が伸びた。

(平穏に、穏便に、何事もなく一年が過ぎ去りますように)

鼓動はばくばくと鳴り響き、必死で怖気づく気持ちを抑える。
差し出された手を握ると、その三倍ぐらいの力が返ってきた。その間も友好的な笑みはない。


「これから夫婦としてよろしくな。村瀬」
「は、はい」

視線をなんとか交えた、その時だった。
カッと店内が真っ白い光に包まれ、数秒遅れてけたたましい雷の音が店内に鳴り響く。

心臓を壊しかけた私とは違い、あろうことか彼は微笑んでいた――。
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