冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

部屋着と下着を見つけ出し、抱きかかえてバスルームへと走る。
朝から引っ越しで動き回っていたので、汗で体や頭皮がべっとべとだ。一刻も早くさっぱりしたい。

(駆さん、確か十六時に退社ってラインに書いてあったな)

帰宅が早いということは、朝から国内線のフライトだったようだ。
覚悟をしていたのに、同居がいよいよ始まると思うと緊張する。

「わー、セレブみたい」

浴室に繋がるガラス扉へと手をかける。
デザイナーズマンションならではの、このスケルトン仕様の空間に慣れる日は来るのだろうか。
馴染みのある華奢なシャワーとは別に、壁にシャワーヘッドまで設置されていてホテルさながらだ。
試しに天井からの水圧を感じて見ようとレバーを上げてみる。

(駆さん、こんないいところに住んでたんだ)

肌に弾いた水滴をてのひらで馴染ませて、うっとりと目を閉じる。

感謝だ。こうして快適な住居を与えてくれたことに、まず駆さんに感謝しないと。
それに二カ月前から家賃と生活費を出してくれているから、浮いたお金を実家へ仕送りできている。
彼はまとまったお金も生活費とは別に契約金として渡そうとしてくれたけれど、仮夫婦なのにそこまでしてもらう理由が見つからず辞退させてもらった。よけいな心配をさせたくないし、実家へ仕送りしていることも秘密にしている。

(そういえば……あとでちゃんと保管しておこう)
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