冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

私の絶叫とともに、勢いよく扉が閉まる。

(無理オブ最悪っ! しょっぱなから下着姿を見られるなんて……‼)

鍵をかけ忘れた自分に非があり、彼を責めるのは間違っていると言い聞かせる。
落ち込みながらなんとか部屋着に着替えリビングにやってきた私は、きょろきょろと辺りを見渡す。
しかし……駆さんの姿がどこにも見当たらない。ものの数分前、鉢合わせたはずだったけれど?

「駆さーーん?」

「安奈」

「ひっ!」

背後から聞こえてきた彼の声に、心臓が飛び上がる。
咄嗟に後ろを振り返ると、駆さんはシンプルな黒Tシャツにぴったりとしたストレッチパンツを履いて立っていた。ちなみに首にタオルをぶら下げている。いつもの様に無表情だ。

「えっと……その恰好はなんでしょう?」

「今からジムに行ってくる。あと、さっきはすまなかった。まさか君がシャワーに入っているとは思わなかったんだ、故意はない。ひとまず今日からよろしく」

「は、はい」

「じゃ」

彼は手を上げるなり、光の速さでその場からいなくなってしまう。
同居初日ということもあり、さすがに今日くらいは一緒にご飯でもと思っていたが、彼はさらさらその気はないらしい。
さすがに淡白すぎるような気もするけれど、あんな姿を見られた後だから逆によかったのかもしれない。

(駆さん、帰ってきてすぐに運動なんて。本当に仕事にストイックな人なんだな)
< 46 / 145 >

この作品をシェア

pagetop