冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
結局彼はそう言い残し、早々にその場からいなくなってしまった。
適当に渡したお土産ふたつ持って、まともに私の顔を見ずに……だ。

(こんなこと全然予想できてたのに、結構ショックだ)

彼の情報が少なすぎるから、色々買って選んでもらおうと思っていたが無駄だった。
悲しい気持ちになって、自然と肩が落ちる。

「思い出した、私……」

(初めに好きでも嫌いでもないって言われたんだ。それは興味がないのと同じってこと)

ようやく契約結婚を申し込まれた理由が理解できた気がした。
興味がない私だから規格外の『感情がいらない結婚ができた』ということ。
五十嵐さんは本当に私と関わりたくないんだ。

「……やっぱり、必要以上に関わらないでおくのが一番だ」

(もう傷つきたくない)

胸の痛みを感じないふりをして、私は散らばったお土産をかき集めた――。
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