冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

「うわ、嘘だろ」

ジムを出る直前に体重計に乗ったはいいが、すぐに頭を抱えた。
この一カ月で体重が四キロマイナス、さらに体脂肪率が五%も落ちていたのだ。
これはさすがにやりすぎの域といえる。最近は暇さえあればずっと動いていたのだから、当然と言えば当然の結果だが。

(これからどうやって性欲を鎮めたらいいんだ……寺に通うか?)

俺は本気でそう思っているのだ。
それくらい彼女と暮らし始めてから体が過剰反応してしまい、困り果てている。
今までの人生、こんな風になったことはない。想い過ぎている『安奈』だからだろう。

(まるで野獣だ。自分が気持ち悪い)

零れ落ちそうな大きな目に見つめられると、胸が締めつけられる。
小鳥のような小さな唇で名前を呼ばれると、舌を絡めて貪りたくなる。

やるせない気持ちのままジムを出て、エレベーターに乗った。

「くそっ……」

刻一刻と、時間は過ぎていく。
契約を交わして三カ月――普通であればかなり仲良くなっている頃だろう。
なのに距離を縮めるどころか自ら突き離してしまっている。
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