結ばれない二人
駅から歩いて5分ほどの場所にある私たちのマンション。
エントランスのデジタルキーの番号を押して、あなたは私の手を握ったまま歩き続ける。

エレベーターに乗り5階を選択する。

私は乗り物が苦手だ。

動き出すエレベーターのほんの少しの揺れに、膝ががくっと力が抜けそうになる。
それでも私が転ばないのは、あなたがすべてを知っていて、先に左手で私を抱きしめるようにがっしりと支えてくれていたからだ。

5階にエレベーターが止まる瞬間も私は再び体のバランスを崩しそうになる。

でも、その瞬間まであなたは私を支えてくれている。

「行こう」
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