必ず、まもると決めたから。
強い雨が窓を叩く音が響く静かな数学準備室に集めたノートを置く。
6月に入り、急に雨が増えた。
毎朝時間をかけて髪の毛を内巻きにカールすることが日課だけど、この季節はよりセットに時間がかかる。恵みの雨だと言うけれど、女子高生には湿気という天敵が現れる憂鬱な季節だ。
「来月の定期テストに備えて、勉強会するか?」
今日は珍しく田中くんから声をかけてきた。
「……ううん、大丈夫。自分でなんとかするよ。ありがとね」
「…ああ」
少し前までは待ち遠しかったこの時間が、今の私には息苦しいものになっている。
「田中くんも財務諸表?の勉強してるんでしょ?お互い、頑張ろうね」
「なぁ、おーー」
田中くんの言葉と同時に、数学準備室の扉が開いた。
「あ、田中くん!居た!」
開いた扉の隙間からひょこっと愛ちゃんが顔を覗かせた。
ここは、私たち2人だけの空間だと思っていたのに。その一歩は、簡単に踏み越えられた。
駆け寄って来た愛ちゃんは田中くんの腕をとる。
「ねぇ、田中くん!私、数学の宿題が分からなくて。教えてくれない?」
「……」
「田中くん、頭いいもんね。教えてあげなよ」
お節介な言葉を言い残して、2人を置いて数学準備室を出た。