星と月と恋の話
結局その後、何だかんだ家まで送ってもらっちゃった。
 
タクシーで帰るから大丈夫、って言ったのに。

「ここまで来たら送りますよ」と言われちゃって。

結局、背負われたまま家まで帰ってきちゃった。

家族、いないときで良かった。

男の子に背負われて帰ってきたら、色んな方向から色んな誤解を受けかねないところだった。

危なかった。

「ごめんね…。結局家まで送ってもらっちゃって…」

「いえ、気にしないでください。足、大丈夫ですか?」

「うん…。平気よ」

学校が始まるまでには、多分治ってる。

明日は、出来るだけ足を酷使しないようにしよう。

「それと、上着も…ずっと着っぱなしでごめんね、洗って返すわ」

「あ、いえ良いんですよ。そのまま返してください。自分で洗いますから」

…あ、そうか。

自分で縫った服を、下手な洗い方で駄目にされたくないのかなぁ。

ごめんね私。迷惑かけっぱなしで。

「じゃあ…じゃあせめて、ハンカチと手拭いは、洗って返すわ…月曜日に…」

「分かりました。急がなくて良いですから」

ついでに、菓子折り付きで返しても良いくらい。

今日一日、迷惑かけっぱなしだったわ。

「ごめんなさいね、今日…色々、迷惑をかけっぱなしで…。楽しめなかったわよね…」

「そんなことないですよ。紅葉は見られましたし…。こちらこそ、折角少しでも楽しんでもらおうと企画したのに、全然楽しませてあげられなくて申し訳なかったです」

そんなこと言わないでよ。

「良いのよ、気にしないで…。フルーツサンド美味しかったし。結月君が女子だって分かったから…今日は実りのある日だったわ」

「…女子では…ないですけどね…」

いいえ、あなたは女子よ。

力持ちの女子。

「じゃあ、また月曜日に…」

「えぇ。また月曜日に、学校でね」

私は手を振って、結月君と別れた。

寒かったり痛かったりと、大変な一日だったけど。

それ以上に、結月君の優しさが沁みる一日だった。
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