星と月と恋の話
…それなのに。

『えぇ〜!何それ、ウケる〜!』

『あはは、災難だったね〜星ちゃん』

今日一日のことを、グループ通話で海咲と真菜に報告したところ。

二人はこの反応だった。

「何笑ってるのよ…」

笑い事じゃないわよ。

笑えるところなんて、私の間抜けさ以外に何もなかったでしょ。

『だって、デート先がハイキング、ってだけでも面白いのに…』

『そうそう。まさか映画館断られるとはねー。しかも貧乏だから行けないって…』

『本当。今時そんなことあるんだねー』

だから、笑い事じゃないでしょ。

仕方ないじゃない。うちの学校、アルバイトは禁止なんだし。

その分、自分で出来る節約を頑張ったり、お金をかけずに行ける場所を探してくれたり、努力してくれてるのは確か。

何でそれを笑うのよ。

少しも面白いことなんてないわ。

『昼間、星ちゃんがTwittersに、紅葉の写真アップしてたから、何かと思ったら…』

『うん、びっくりした。映画館デートのはずじゃなかったっけ、って思ってたら、そういうことだったのね』

そうよ。何か悪いの?

「ハイキング自体は悪くないじゃない。紅葉だって綺麗だったわ。二人も写真見たでしょ?」

『見たけどさ〜…確かに綺麗だったけど…』

…けど、何よ?

『…デートで山登りって…。なんか、ねぇ?』

『うん。ロマンチックさの欠片もないって言うか…』

『さすが三珠クン、って感じだよね。分かってないわ〜…』

…何がよ。

何が悪いの?

『おまけに、また手作り弁当持参なんでしょ?所帯染みてるね〜』

『本当。小学生か中学生のデートみたい』

小学生は、お弁当を手作りしてきたりしないわよ。

ましてや、自分で縫った服を着たりもしない。

「何でそんなに馬鹿にするのよ?」

今日一日、どれだけ結月君に助けられたか。

それを思うと、私は彼に足を向けて寝られないわ。

散々足向けたけどね、今日。

『やだ、星ちゃん怒ってるの?』

と、海咲に聞かれた。

「別に…怒ってはないけど、そんなに馬鹿にしなくても良いでしょ」

『してないしてない。そんなムキにならないでよ』

ムキに…なってなんかない。

何で私が、結月君のことでムキにならなきゃいけないの?

別に…好きで付き合ってる彼氏でもない、のに…。

『とにかく、二回目のデートお疲れ様。無事に一ヶ月目が終わったね』

『あ、本当だ。もう三分の一終わったじゃん。お疲れ〜』

「…」

私は、思わずびっくりしてしまった。

…そっか。

もう、三分の一終わったんだ。

何だかあっという間だったなー…。
 
『あと二ヶ月、頑張ってね星ちゃん』

「うん…そうね…」

私は、生返事でそう返した。

罰ゲーム期間の三分の一が終わって、喜ばしいことのはずなのに。

何だか、全然そんな実感がなかった。
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