星と月と恋の話
急遽、シェフを呼んでくると。

「あー…成程…」

カチカチじゃがいもでいっぱいになった、小鍋の惨状を見て。

結月君は、全てを理解した、みたいな顔で頷いた。

「明らかに加熱が足りてないので…温め直しましょう」

「でも、時間通り茹でたんだぜ?」

「はい。でも、ちょっと鍋が小さいのと…じゃがいもの品種によって、水分量も違いますから。それに、ここまで冷めてしまってると…調味しても馴染まないので、やっぱり温め直した方が良いです」

とのこと。

…何だか、お医者さんみたいね。

「診察の結果…」とか言い出しても、私は驚かないわ。

「温め直してる間に…他の材料を切ったり、きゅうりの塩もみを作っておきましょう」

「あ、あぁ…」

「分かったわよ…」

結月君に促され、隆盛と海咲は戸惑いながら作業を始めた。

結局、何だかんだシェフのお世話になってるわね。

海咲も、自分でやるとか言ってたけど。

慣れないことを言うものじゃないと、教訓になったわ。

更に。

「なぁ、メレンゲを作るって書いてあるけど…メレンゲってどうやって作るんだ?」

チーズケーキ係の正樹までもが、こちらにやって来た。

私に聞かないで。私には分からない。

「シェフ〜…。メレンゲの作り方って分かる?」

「え?えぇと…。確か砂糖を入れながら、ハンドミキサーで混ぜるんです。卵液や水が混ざったら泡立ちが悪くなるので…。綺麗なボウルに、卵白と卵黄を分けて…」

もう私達のグループ、結月君なしじゃ立ち行かないよ。

結月君さまさまじゃないの。

結局、4品全部、結月君の手を借りて作ってる。

6人もいて、まともに料理が出来るのが結月君一人だけって。

つくづく君は良い旦那さんになれる。

何なら、良い奥さんにもなれると思うよ。
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