星と月と恋の話
そんな調子で、結月君の手を惜しみなく借りながら。

無事、実習時間内に、4品全てを作り終えることが出来た。

全部結月君のお陰です。

カチカチだったポテトサラダは、ほっくほくになって美味しそうだし。

具だくさんの豚汁は、結月君が切ったゴボウだけが綺麗に切れてて、他の具材はちょっと歪だけど…まぁ許容範囲。

チーズケーキは、ふっくら膨らんで美味しそうな匂いを漂わせ。

ハンバーグは、ファミレスのそれより美味しそうな出来上がり。

えー。

こちら4品、全て結月君のお陰です。

彼の功績です。

結月君がいなかったら、私達今頃、多分まだ生の食材を前におろおろしてたと思う。

あるいは、とんでもなく美味しくない献立を食べることになってたでしょうね。

その証拠に。

他のグループの皆は、時間が来てもまだ完成していなかったり。

完成しているグループも、よく見てみたら、野菜炒めと卵スープとナムル、みたいな、比較的簡単そうなメニューだった。

つくづく結月君がいてくれて助かった。

そして、肝心の料理の味だけど。

「うん、めちゃくちゃ美味しい」

結月君が、手を貸してくれただけのことはある。

チーズケーキなんて、正樹が担当したとは思えない出来映え。

正樹はクリームチーズ混ぜてただけだから。卵を卵黄と卵白に分けて、根気良く混ぜてメレンゲを作ったの、結月君だから。

そして何より、一番美味しいのは。

「ハンバーグが絶品だぁ」

私は口いっぱいにハンバーグを頬張った。

こんなに美味しいハンバーグ、食べたことないわ。

ましてや、学校の家庭科室で、こんなハンバーグを食べられるなんてね。

絶品絶品。

「ありがとね〜、結月君。シェフ」

「あ、いえ…そんな…」

「謙遜しなくて良いのに」

君がいなかったら、私達今日一日、全員立ち行かないところだったよ。

持つべきものは、料理上手なクラスメイトだね。

…しかし。

「…」

「…」

はしゃいでいる私と、何処か恥ずかしそうな、照れ臭そうな結月君とは裏腹に。

正樹や真菜達は、どうにも釈然としなさそうな表情だった。
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