星と月と恋の話
…これまで友達の話なんて、ほとんどしたことなかったしね。

小学校のとき以来か?

いや、小学校のときも、ほぼずっと一人だったもんな。

まだ低学年だった頃、一人二人、近所の子と遊んだことがあったけど。

あれが最後だったんじゃないか?

まともに、友達と呼べる人と遊んだのは。

それ以降はずっと一人だ。

友達なんて、出来たこともない。

作ろうと思ったこともない。

放課後になったら遊んでいる暇もない。家の家事が待ってるし。宿題もあるし。

家の中を掃除したり、庭の植木を手入れしたり、草むしりをしたり…。

母の仕事を手伝ったり、手内職に洋服を縫ったり…授業の予習復習をしたり…。

空いている時間なんて、ほとんどと言って良いほどない。

遊んでる暇もない。

昔からそんな生活だったから、特別それが不満だとは思わない。

強制されてやらされている訳でもない。自分がやりたいから、そうしているだけだ。

ゲームもスマホも持ってなくて、どうやって暇を潰してるんだ、と思われがちだけど。

ないならないなりに、いくらでも時間を潰す方法はあるものだ。

むしろ皆、あんな小さな画面を見つめて、いつも何やってるんだろうと思う。

画面の中で何が起ころうと、それは所詮、画面の中の世界でしかないのに。

そんな空虚な、作り物の世界なんか見て…一体何が楽しいんだろう?

…それはともかく。

「ねぇ、今度そのお友達、うちに連れてこない?」

「え?」

突然の母の誘いに、僕は驚いた。

連れてくる?星ちゃんさんを、うちに?

「結月のお友達がどんな子か、会ってみたいわ」

「そんな…」

「ね、今度のお休みにでも、その子を誘ってうちに連れてきて」

「…」

…母の、この好奇心いっぱいの顔。

僕の…友達なんか見て、何が楽しいのか…。

正直断りたかった。

だって星ちゃんさんは、正確には僕の友達じゃなくて…。

…。

でも、これだけ期待してくれている母に「やっぱり嫌です」とは言えなかった。

それに。

これまでちっとも友達が出来なくて、そのせいでずっと母を心配させてきた。

その分、せめてもの親孝行がしたかった。

「分かった。誘ってみるだけ、誘ってみる…」

「うん、そうして。手作りのあんみつをご馳走してあげる」

あんみつだって。

僕は好きだけど、星ちゃんさんはどうだろう?
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