星と月と恋の話
私も意外だったけど、真菜と海咲にとっても意外だったようで。

二人共、驚いた顔で少し固まっていた。

そうでしょ。

私もそんな気持ちだったもの。

「へぇ…?三珠クンのマザコン疑惑は無実だった?」

「いや、マザコンはマザコンだった」

「やっぱり?」

でも、彼はただの、嫌われるタイプのマザコンじゃなくて…。

「良いマザコンだよ。親孝行な息子って感じ」

「何それ?マザコンはマザコンでしょ?キモいじゃん」

そんなことはない。

それは大きな誤解だ。

「違うのよ。結月君はこう…愛すべきマザコンって言うか」

「何言ってるのよ。星ちゃんったら洗脳されちゃって」

何よ、洗脳って。

上手く説明出来ない自分が酷くもどかしい。

二人だって、あの結月君とお母さんのやり取りを見てたら分かるわよ。

結月君はお母さんのことを、凄く大切に思ってるって。

「あのねぇ、あんた達…」

説明しようとしたが、その前に。

「それで、三珠クンの家、どうだった?」

と、真菜が聞いてきた。

「え?」

「貧乏なんでしょ?あの人。やっぱりボロいアパートに住んでて、牛乳パックの小物入れを置いてたりするの?」

真菜、あんたは貧乏な家庭をどういう想像してるの?

そんな漫画じゃないんだから。

「普通に一軒家だったわよ。古いけど、手入れはきちんと行き届いてたわ」

「へぇ〜、一応自分の家はあるんだ」

そうよ。

しかも、その家の管理を結月君がしてるのよ。

なんて偉い。

「牛乳パックの小物入れは?」

「ないわよ」

家具も、年季が入って古びたものは多かったけど。

しかし、決して埃が積もっているようなことはなかった。

隅々まできちんと丁寧に掃除している証。

だから、全然貧乏臭さみたいなものは感じなかった。

何なら、私の住んでるマンションより綺麗なくらいよ。

「じゃあ、三珠クンのお母さんは?会ったんでしょ?」

と、今度は海咲が聞いてきた。

聞かれると思ってたわ。

「うん、会ったわよ」

「どんな人?意地悪ババァって感じ?」

まさか。
 
あれほど良いお母さんを、鬼ババだの意地悪ババァだの呼んでたら、バチが当たるわ。

「意外かもしれないけど…凄く良い人だったわよ」

「へぇ?」

二人共、本当に意外そうね。

「私にも親切だったし…。あ、そうだ。あんみつ作ってもらったし」

あのあんみつ、本当に絶品だった…。

と、思ったけど。
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