星と月と恋の話
「どうしたのよ」

「…!」

結月君は、そのクレーンゲームを前にして固まっていた。

…何?一体どうしたの?

珍しい景品でもあったのかと思ったが。

そのクレーンゲームの景品は、有名アニメのフィギュアだった。

へぇ、結月君、このアニメ知ってるのかな?

まぁ有名だものね。「あっ、これ知ってる!」って思ってるのかも。

だからって、そんなびっくりして固まらなくても…。

結月君もフィギュアとか興味あるのかしら?

「…星さん…。これ、酷いですよ」

結月君はクレーンゲームを指差して、深刻な顔で言った。

「な、何が酷いの?」

「これを見てください」

「え?」

結月君が指を差したのは、クレーンゲームを動かす小銭の投入口。

そこには、1回200円、のシール。

…一体何がおかしいの?

「君が何を言いたいのか、私には分からないわ」

「よく見てくださいよ、200円ですよ?200円!一回200円もするんですか、これ…!?」

あぁ、成程そういうことね。

一昔前はクレーンゲームと言えば、一回100円が鉄板だったけど。

最近のクレーンゲームって、結構値段上がってるものね。

200円くらい、普通だと思ってたわ。

「た、高い…!こんなフィギュアの為に、200円も払うなんて…。しかも一回で取れるとは限らないんですよね…!?」

「…」

…あのね、結月君。

君は、アニメのフィギュアなんて興味ないのかもしれないけど。

世の中には、例え一回200円でも、どうしてもこのフィギュアが欲しくて、頑張って入手する人がいるのよ。

そんな人達を忘れないで。

「そもそも、クレーンゲームに100円を費やすのも、勿体ないですよね。絶対取れるとは限らないのに…。…100円って言ったら、特価の卵一パック買えるじゃないですか」

クレーンゲームの景品が、一パックの卵に負けた。

そりゃ、君はそうかもしれないけど…。

…でもそうじゃないのよ。ねぇ?

クレーンゲームが好きな人だっているんだから。

「知ってる?結月君」

「な、何をですか?」

君は、一回200円のクレーンゲームに驚いているようだけど。

世の中、上には上がいる。

「中には、一回500円のクレーンゲームだってあるのよ」

「ごっ…!?」

あ、固まっちゃった。

卵5パック分だものね。

結月君の頭の中は今、5パックの卵でどんな料理が作れるかについて、ぐるぐると回っているに違いない。

君はそういう人よ。
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