星と月と恋の話
「あああああ、なん、うわぁぁぁ!何ですかこれ、何なんですか!?」

「結月君、撃つのよ!叫んでないで撃つの!」

「えっ!?こ、こうですか!?」

「馬鹿、何でこっちに銃口を向けるの!?」

ガンシューティングゲームなら、ゾンビに向かって銃を撃つだけだから。

初心者の結月君でも出来るだろう、なんて。

そんな甘いことを考えた、私が馬鹿だったわ。

何故か、私が撃たれた。

私はゾンビ?ゾンビなの?

結局、あわあわ叫ぶばかりで、ろくに引き金を引かなかったせいで。

結月君は、あっという間にゾンビに食べられて、終了。

…儚い命だったわね。

「あぁ、気持ち悪かった…」

初めてのリアルゾンビに、顔を青くしている結月君である。

結月君、ゾンビ系のホラーは駄目なタイプ?

怖いもの知らずに見えるけど、意外とそうでもないのかしら。

「あのね、結月君…。君のスコア見てみなさいよ。倒したゾンビの数、三体って…」

マシンガンで思いっきり薙ぎ倒していくのが、ガンシューティングゲームの醍醐味なのに。

たった三体しか倒せずに、どうするのよ。

ゾンビが襲いかかってきたのよ?

ちょっとは諦めずに戦いなさい。

「君には武器があるのよ、武器が。武器を使いなさい」

「いや、僕はマシンガンやナイフは信じませんから。信じるのは己の拳だけです」

何?その漫画の名台詞みたいな。

しかも、それはやられキャラの台詞では?

「徒手空拳なら…20体は倒せた…」

どういう負け惜しみよ。

マシンガンで、三体しか倒せなかったのに。

徒手空拳で、20体も倒せる訳ないじゃないの。

「難しいんですね、ゲームセンターのゲームって…」

「…」

ゲームが難しいんじゃなくて、結月君が下手過ぎるのよ。

「それから、星さんは上手ですね、ゲーム」

「…」

私がゲーム上手なんじゃなくて、結月君が下手過ぎるのよ。

…でも、まぁ。

何でも出来る…ように見える結月君でも、苦手なことがあると分かって良かったわ。

意外と、普通の中高生が得意なことが、むしろ結月君にとっては苦手分野なのね。

そういう認識で良いのかな。
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