星と月と恋の話
「良い?私は真剣なのよ。笑ってる場合じゃないの」

「はいはい、ごめん、ごめんって」

半笑いで謝るんじゃないわよ。

どうやら、私の真剣度が伝わっていないようね。

「私の決意は固いのよ。…今回はヤバいの」

「そんなにヤバいの?」

「えぇ、ヤバいのよ」

かつてない危機感を覚えてしまうほどには、ヤバいの。

…いや、本当は気づいてたのよ。前々から。

制服のスカートのホックが、微妙にキツいなーと思ってたんだから。

でも、あまりにも目を背けたい現実だったから。

思わず、見ない振りをしてしまっていた。

認めたくないその現実に、昨日直面してしまったのよ。

体重計という、この世で最も恐ろしい家電製品によって、明らかにされてしまったんだから。

あの子は素直よ。

そして残酷だわ。

いつだって、私が目を背けたい現実を、リアルに伝えてくるんだもの。

少しはオブラートに包むということをしてくれても良いのに。

そんな気遣いは、全く無し。

現実は非情だわ。

でも私は、そんな非情な現実を受け止め。

そして、前に進むのよ。

即ち、ダイエットをすることに決めたの。

怠惰だった自分を反省して、減量することにしたの。

目標、5キロ減。

「そんなに太った?」

「えぇ…。大ピンチよ」

思えば最近の私は、甘いものをばくばく食べ過ぎていた。

おはぎとか…。チョコレートとか…。

…あれ?

これってもしかして、間接的に結月君のせいなのでは?

そうよ。結月君の作ってくれるお菓子が美味しいのが悪いのよ。

この間のバレンタインのチョコ大福だって、すっごく美味しかったし。

あれは犯罪的な味だったわ。

そのせいね。私がみるみる肥えてしまったのは。

結月君の罪は重いわ。

これは、結月君には責任を持って、償ってもらわないといけないわね。
 
…と、思ったそのとき。

「おはようございま、」

「来たわね犯罪者。その罪を償ってもらうときが来たわよ」

「は、はい?」

登校してきたばかりの結月君を、私はガシッと掴んだ。

逃さないわよ。

私をぶくぶくと太らせてくれた、その罪を償ってもらいましょうか。
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