星と月と恋の話
「おはよー星ちゃん」 

「…おはよ…」

真菜と海咲に話しかけられても、私は机に突っ伏して、ぐでーんとしたまま。

何とも気の抜けた返事を返すことしか出来なかった。 
 
「あれ?どうしたの?」

「なんか元気ないね」

…元気…なくすわよ、そりゃ。

昨日、あんなものを見せつけられたら…。

「何でそんなに落ち込んで…あ、そっか。今日の四時間目の小テスト?」

「残念ね。それはもう捨ててるわ」

そんなことより大事なことが、世の中にはあるのよ。

決して、勉強するのが面倒だった訳じゃなくてね?

「じゃあ、どうしたの?」

「…どうしたもこうしたもないわよ…」

「まぁ元気出してって、星ちゃん。良いものあげるから」

…良いもの?

私は、ひょこっと顔を上げた。

すると、真菜はコンビニの白いビニール袋に手を突っ込み。

「じゃーんっ」

「新発売」のシールが貼られた、魅惑の…。

「期間限定ふわとろチーズスフレケーキ。これ、星ちゃん食べたいって言ってたでしょ?」

うっ。

そ、それは…。

私が先週からずっとチェックしてた、新作のコンビニスイーツ…!

「今朝コンビニに寄ったら、早速売ってたからさ。買ってきたんだよ。はい、星ちゃんにあげる」

…ごくっ。

ふわふわのスフレケーキが、何とも食欲をそそる…。

…けども。

「…駄目よ。これは受け取れないわ」

血の涙を流して、私はチーズケーキを真菜に押し付けて返した。

「え?何で?これ欲しいって言ってたよね?」

そうね、先週までの私はそう言ってたわ。

確かに言ってた。

でも…生まれ変わった今日の私は、このスフレチーズケーキを受け取る訳にはいかないの。

何故なら。

「そうね。でも…我慢することにしたのよ」

「我慢?何で?」

「私は今日から、ダイエットすることにしたの」

私が、力強くそう宣言すると。

真菜と海咲は、ポカンとして互いに顔を見合わせると。

「…ぷっ」

途端に、噴き出して笑い始めた。

…あんた達。これは笑い事じゃないのよ。

全くいつもいつも…他人事だと思って。
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