素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
「……あ、あのね、ゴトフリー。さっきの、ほんとに何でもないの。ちょっと話を聞いてもらっていただけだから」

 アリスのその言葉を聞いて、ゴトフリーは顔を上げた。その可愛い顔の紺色の瞳にあるものの正体がわからなくて、アリスは覗き込もうとした瞬間に、ゴトフリーはいつもの笑顔で言った。

「アリス……明日は休みって言ってたよね? もうちょっとで勤番が交替だから、今夜、俺の家にご飯食べに来ない? 俺、結構料理得意だから、良かったら食べて欲しいな」

「……うん!行きたい!」

 そう言った笑顔の彼が何を企んでいるなんて、まだまだ付き合った期間のすくないアリスにはその時わからなかった。

◇◆◇

「ゴトフリー、ほんと美味しい」

 アリスはゴトフリーの手料理を食べながら、頬を紅潮させて感動した。

 献立自体はよくある普通の家庭料理なんだけど、ちゃんと基本の手順通りに作られていて、男の人の料理にありがちな大味なこともなく、繊細な味付けも引き立っている。ゴトフリーが料理上手であることは今夜ご馳走になっただけでよく分かった。
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