素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
 それを聞いてはーっと大きく息をついたゴトフリーに、何か言ってはいけないことを言ってしまったかとアリスは慌てた。付き合ったのは目の前の彼がはじめてだから、付き合った上でのマナー的なものがわからないからだ。

「な、何?」

「ううん、でもこれからはお酒を飲むのはリリアか俺が一緒に居る時じゃないと絶対にダメだよ。もしそれ以外で酔っ払ったら、心の中にアレックの名前を思い浮かべて俺に迎えに来るよう伝えてって言うんだ。わかった?」

 心配性の彼氏の言葉にうんと頷いて、アリスは以前から彼にして欲しかったことを思い出した。

「……ね、ゴトフリー、これに私の名前書いて」

 目の前にあった白い紙を一枚取ってすぐ隣に居る彼の前に滑らせた。持っていたペンもはいと手渡すと、顔を上げたゴトフリーは戸惑いつつ受け取る。

「ん、名前? どうするの?」

「良いから良いから」

 その言葉に不思議な顔をしつつ、さらさらと流麗な字でアリスの名前を書いた。それがなんでもないことのように、目の前で書かれる事実に感動してしまう。当たり前のことなんだけど、彼の提出する書類にある通りの美しい文字だ。
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