竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
「……自分の魅力を知ってもらうのは、狙った特定の人物だけで良いと思いませんか。あの孔雀男のように、誰彼構わずのような爛れた過去を持つなら。もし、仮に本気で口説かれたとしても、自分とその他大勢の価値は彼の中で変わらないのではないかと、そう誤解してしまっても仕方ないでしょうね」

「……ジェラルディン?」

「いえ。失言でした。私は……扉の前で待機しますので、ナトラージュはゆっくりとお休みください」

 彼女と話しながら、辿り着いていた自分の部屋に入る。ラスはいつもの定位置にいないので、どこかに外出しているようだ。

「……私は大丈夫なんだけど……」

「ナトラージュの警護を隊長から命じられておりますので、仕事の内です。私のことはお気になさらず」

「じゃあ……部屋の中で警護してくれる?」

 彼女を扉の外に立たせたまま、自分だけ部屋の中で休むのは気が引けた。そう言えば、ジェラルディンは仕方なさそうに肩を竦めて了承してくれた。


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