竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる

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 ナトラージュは起き上がって下履きを履き、慌てて二人が揉めている様子の扉近くにまで駆けつけた。

 やっと落ち着いて話せると思ってか、ヴァンキッシュは目に見えて嬉しそうな表情になり微笑んだ。二人の状況を見たジェラルディンはさっと剣を納めて、少し眉を寄せた。

 背の高い彼をじっと見上げて、今朝まで一緒に居た時のことがどうしても頭の中をよぎる。美麗な整った顔がほんの少しの距離にあった、とんでもない事をお互いにしたベッドの上でのことを。

「あのっ……昨日は、私のミスで危ないところを助けて頂き……本当に、ありがとうございました。見ての通り、もう大丈夫ですので」

 みだらな情事を思い出し、顔を真っ赤にしてしまいながらも懸命にお礼を言ったナトラージュは、一瞬何かを探るような目をした彼と目を合わせた。けれど、目は細まりそれはすぐに掻き消される。

「……そう。僕の怪我も、大したことはない……君が何か思うなら。どうか、気にしないで欲しい。少しだけ、話をしても?」

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