竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる

15 笑顔

(……ちゃら男、今日はまだ部屋の前で待ってるみたいだぞ。住んでいる所を知られてるんだから、こうして逃げ続けていても、どうにもならないんじゃないか。一回くらい話してやれよ……それに俺。早く帰って、新作読みたいんだけど)

 宿舎前の廊下で、バサバサと大きな音をさせて舞い降りてきたラスは、仕事帰りで白いローブを着たままのナトラージュに抗議するように言った。

 このところ、ナトラージュと一緒に仕事が終わってからも、無意味に時間を潰してから遅い時間に部屋に帰るという生活が続いていた。ラスは続きを楽しみにしている、この前買って貰ったばかりの冒険譚が思うように読めなくてイライラしているのだ。

「ラス……ごめんね。もうちょっとだけ、待って。今夜はどこかで時間を潰してから帰りましょう」

< 136 / 228 >

この作品をシェア

pagetop