竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
 彼はようやく捕まえる事の出来たナトラージュと、色々と話したい事もあったはず。けれど、躊躇う事もなく自分のすべきことを優先した。

 その姿を見て、胸がどうしても高鳴った。

(いつも冗談みたいな事ばかり言っているのに、仕事になると……やっぱり真剣なんだよね。当たり前だけど……カッコ良い……)

「……ナトラージュ。久しぶりね」

 突然聞こえたその声を聞いて、久しぶりに体が竦み上がるような気持ちになった。カミーユが先程来た時に、もしかしたらと考えたはずなのに。

「お姉様……」

 ナトラージュは旅装の姉を前にして、それだけしか言えなかった。

 普通なら何か言うべきことが、あったはずだ。長い間会っていなかった実の姉に、ろくに挨拶も出来ない自分が嫌になった。

 カミーユと先に会ったことでも、なんでも軽く言えれば良かったのに。ナトラージュは、スカーレットを前にすると、どうしてもラスに選ばれたあの日に見た悲しそうな表情をどうしても思い出してしまう。

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