竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
 ぽんっと軽く跳ねるような大きなベッドの上に下ろされたのは、城の中の貴賓室のような豪華な一室だった。柔らかく、それで居て体全体をしっかりと包み込む極上の寝心地。貴族であったナトラージュでも、未だかつて味わったことのない最上級のもの。

 ヴァンキッシュはナトラージュをベッドに下ろした後、一度入ってきた扉へと戻り、鍵をかけそれをもう一度確認していた。

「ここは?」

 頭に浮かんだ疑問をそのままに聞いたら、彼は難しい顔をして答える。

「一応……オペルの外交官の身分にある僕に客分として、用意されている部屋だ。本当なら君との初夜は結婚式後、国で一番の宿屋か二人で相談して建てた新居でしたかったんだけど……僕たちは……あの医務室で、もう既に結ばれているんだよね?」

「……そうです。私のせいで、本当にごめんなさい。あの時、ヴァンキッシュ様は自分から、率先して動いていたし。私はもしかしたら、うっすらと記憶があるのかもしれないと思っていました」

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